障害を持ったイルカが見せる演技
この作品には出演していないが、彼とは『パコダテ人』(2002) 以来の付き合いになる。
この映画は沖縄美ら水族館にいる尾びれを壊死で失ったフジという名のイルカと人間の物語だ。
何よりも驚きなのが、尾びれを失った障害を持つイルカをフジ自身が演じているという事だ。
CGや作り物に頼らない本物の映像に敵うのものはない。
嘗て、事件の本人に自分自身を演じさせた映画があった。
アッバス・キアロスタミの『クローズ・アップ』(1990) という作品だ。
ドキュメンタリーとフィクションを交差させる事に於いては究極の手法だと思う。
しかし人間でさえ奇跡的だと言うのに、この作品ではイルカが自分の過去を演じているのだ。
そういう風に見えるように撮ってるんですよと言われたらそれまでだが、
フジがいる事で演じている俳優たちも皆リアルな人間として見えた。
障害を持っていなくとも、僕は水族館のイルカをとても尊敬している。
昔、しながわ水族館でイルカショーを水中窓から見て、涙しそうになった事がある。
近くで見ると彼らは意外にも傷だらけで、海よりも決して広くはなかろうプールで体を底面すれすれに体を捻っては水深以上のジャンプを見せて、観客を喜ばせているのだ。
そんな話を矢口史靖監督に話した事が『ウォーターボーイズ』(2001) の水族館訓練エピソードに繋がった事もあった。
こんな逞しいイルカの実話があったなんて今まで知らなかった。
この作品は何らかの障害を抱えて暮している人たちを勇気づける映画ではなかろうか?
前田哲監督自身はまるでコメディアンのような男であるが、
『ガキンチョ★ROCK』(2003) のまるでラストシーンのような情感の冒頭シーンに感銘してた僕は、この人はいつかシリアスな物語をやるべきだと思っていたのだが、
この作品を観て、それが実証されたと思えた。
今後の前田哲監督作品も期待である。
そしてまた参加出来る事を願う…


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